利益額≠手元現金

3月決算の企業が多い日本、1月も後半に差し掛かると「今年の利益はどれぐらいかな」と損益計算書を試算する方もおられるでしょう。

ここでよく起こる勘違いが、「利益額=手元現金」という大きな間違いです。

お客様に「利益が残っているからと言って、手元に現金が残るわけではないんですよ」と話すと大抵の場合、「何故ですか?利益が出ているのだから現金が残っていて当然だと思うのですが」という返事が返ってきます。

利益額=手元現金という勘違いを続けていると、黒字倒産とう結末を迎えます。実際、倒産企業の約半数が黒字倒産(利益は出ているがお金が足りずに倒産してしまう)という状況にあります。

原因はそれぞれ違うと思いますが、根本的な要因は「利益額=手元現金」という勘違いにあるのではないかと考えています。

利益額と手元現金は絶対にイコールにはならない

この勘違いが起こる原因は、商習慣にあります。

原材料や製品を購入した時、いつお金を払いますか?原材料や製品を購入したと同時ではなく、遅れてお金をはらいますよね。

また、自社の製品や商品を売った時、いつお金をもらいますか?製品や商品を売ったと同時ではなく、遅れてお金をもらいますよね。

商習慣として、掛け取引をしているので、利益額と手元現金がイコールになる事がありません。

損益計算書には、モノが動いた時点で売上や費用を計上するので、お金が動いた時点で売上や経費を計上するわけではありません。

一方、貸借対照表には売掛金が入金された時、買掛金を支払った時に計上します。

利益額と手元現金がイコールにならないのは、モノが動いた時点で計上する損益計算書、お金が動いた時点で計上する貸借対照表、この二つの財務諸表の計上時期の違いによって起こります。

この違いを知っているだけで、経営判断の精度が今よりも格段に上がります。逆にこの違いを知らないと、間違った経営判断をしてしまうことになります。

黒字倒産という最悪の事態を避けるには、経営者がしっかりと会社の数字を読めることが大切です。

一度に全てを理解することは難しいですが、小さなことからコツコツと、この連載が少しでもその力になれれば有難いです。